不倫慰謝料の請求は内容証明郵便でなされるのか

文責:所長 弁護士 堤信一郎

最終更新日:2025年04月22日

1 内容証明郵便は必須ではないが利点がいくつかあります

 実務において、不倫をした配偶者や不倫相手に対して不倫慰謝料を請求する際は、配達証明付き内容証明郵便を用いるのが一般的です。

 法律上は、不倫慰謝料を請求する方法は限定されていません。

 口頭で請求することもできますし、メールで請求することもできます。

 もっとも、これらの方法によって請求をしたという事実は、第三者による証明ができません。

 配達証明付き内容証明郵便であれば、第三者である郵便局が、あて先とされた人に配達したという事実と、いかなる内容の文書を誰から誰あてに差し出されたかという事実を証明できます。

 このことには、事実上、および法律上次のような利点があります。

 

 ①相手に心理的な圧力を加え交渉を行いやすくする

 ②消滅時効の完成を猶予することができる

 

 以下、それぞれについて詳しく説明します。

2 相手に心理的な圧力を加え交渉を行いやすくする

 一般的にも、配達証明付き内容証明郵便というと、本格的に法的な争いが始まったというイメージがあるかと思います。

 基本的に、配達証明付き内容証明郵便を用いるケースというのは、法的措置をとることを前提としていることが多いです。

 例えば、一定期間内に話し合いを開始できない場合には、訴訟提起を検討している旨を記載します。

 後述するとおり、時効の完成を防ぐためにも用いられます。

 また、配達証明付き内容証明郵便が届いたことで、相手は不倫慰謝料を請求する旨の郵便物が届いたことを否定することができなくなり、解決を先延ばしにすることが困難となります。

 これらの効果によって、不倫慰謝料に関する交渉が行いやすくなります。

3 消滅時効の完成を猶予することができる

 不倫慰謝料を請求する権利は、法的には不法行為に基づく損害賠償金の請求権ですので、一定の期間が経過すると時効によって消滅します。

 消滅時効の完成まで時間が少ない場合には、催告(請求権行使の意思を明らかにしたと評価できる事実)により、催告の時から6か月間は消滅時効の完成を防ぐことができます(時効完成猶予事由)。

 そして、時効完成が猶予されている間に、訴訟を提起するなどの対応をします。

 催告の方法については、法律で決められてはいません。

 もっとも、消滅時効の完成について争われた際には、催告をした事実を客観的に証明できるようにしておく必要があります。

 配達証明付き内容証明郵便で催告をしておくことで、いつ、だれに対して、慰謝料請求権の行使をしたかを証明できるようになります。

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